田中泰阿弥

庭の世界の数少ない雑誌の一つに建築資料研究社から
出ている『庭』という雑誌があります。

その『庭』誌の、最近の号で特集を組まれている田中泰阿弥
http://www.ksknet.co.jp/book/search_detail.asp?bc=05002195
という昭和の作庭家がいるのですが、この人はかなり凄いので
是非、実際の庭を見に行きたいと感じました。

金閣寺銀閣寺の庭園の一部修復などに加えて、茶室の設計から露地
の作庭までかなり美的に深度のある作品を作っています。
読む限り、空間的に美しいだけでなく、排水などの庭の機能性の
部分もかなり考えられており、(庭園には、建築などのように構
造などの機能性が余り求められない(と思われてる)ため、かなり
鑑賞価値に偏ったデザインがなされることが多い。最近でも人気の高い重
森三玲氏などの作品にもそれは言えます。)
茶における思想をピュアに表現されていることが伺えます。

自分も実際に見た訳ではないので偉そうなことは言えないのですが、
昭和、特に戦後に作られた庭は、江戸期にある意味完成された
「日本庭園」の自己模倣を感じる庭が多いのですが、泰阿弥さんの
作品を見ていると、それとは明らかに一線を画している。

庭園の文化的な本質を正統に引き継いでいくと、こうなるという
ことを感じました。細かい話をしていくと中世から江戸までの
庭園の良質な部分を泰阿弥さんは完全にものにしていると
いう印象を受けました。

ただ、ここから日本の庭園というのはどう進むのか。
もうこれで行き止まりなのではないか、というような疑問を
持ってしまうほどの完成度なので、何となく困ります。

泰阿弥さんの視線は意識しながら現代の庭は作って
行かないとなーと思いました。