『デザインの風景』永原康史

デザインの風景

デザインの風景

原康史さんの『デザインの風景』を読んでいました。

グラフィックデザイナーとして、書籍やウェブ、展覧会のディレク
ションなどメディアを横断するデザインをする永原さんの、デザイ
ンを巡るエッセイ集?という感じの本です。

デザイナーの日常の思考が覗けて面白いです。
物事の観察やそれに対する考察が丁寧で、どこか
暖かみもあり、上品な文章を書かれます。

書くこともデザインの仕事、という言葉が出てきたと思うのですが、
その通り永原さんの作る作品も、視覚の快楽に偏った装飾的なものと
いうより、デザインすべき問題に対する思考の表現という感じで、庭
づくりに置き換えるとそのまま適用できることでは無いのですが(庭
は社会性や機能性と別の要素が多いので)、思考の表現自体が、空間の
面白さを生み出すことがあることには変わりないです。

デザインとの違いは、デザインがある問題を、社会に開かれつつ、
何らかの形で解決するのに対し、庭はお施主さんの個人的な思いを庭
職人の持つ個人的なイメージ、もっと近い言葉でいうと心像、や技術
で形にするということ。

そうなると、やっぱり内面的な、心の問題とか、風景に対する心像の
豊かさとか、なかなかあいまいな育てるのが難しいところを育てな
きゃいけないのかな、と今は思っています。
東京の有名な庭師さんは「文学を読まなきゃだめだよ」と言っておら
れる方がいたりします。

そういえば、昨日のお仕事のお施主さんに、帰りに「面白いから読んで!」
と小説を手渡されました。元々書籍の編集者を目指していたことがあった
こともあり、文芸作品は大好きだったのですが、最近、特に独立してから
小説を読んだりする心の余裕が無かったのですが、大事なことかなと思わ
せていただきました。

読んだ本と、これから読む本が繋がって行くようで、不思議です。
やっぱ本は偉大ですね!